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東大から新たな挑戦 かずさマジック・杉浦海大選手 社会人野球NOW vol.98

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日本製鉄かずさマジックに、東京大で主将を務めた捕手、杉浦海大(かいと)選手(22)が加入した。卒業を前に、既に年明けからチームに合流し、練習に励んでいる。アマチュア最高峰のレベルの高さを実感する日々だが、都市対抗野球大会でマスクをかぶることを目標に鍛錬を積んでいる。

2月初旬、千葉県君津市のチーム本拠地を訪ねると、練習を終えた杉浦が焼けた顔で引き揚げてきた。薄暮のグラウンドに目をやりながら、ルーキーとしての心境、心構えを言葉にした。

「練習参加からちょうど1カ月がたちました。初めて覚えることが多く、レベルの差はあって、正直、この差は苦しいなと思う一方、頑張らなきゃとすごい気合が入るところもあるというのが、率直な感想です」

直面している力差から目を背けず、現状を正面から受け止める、そのまなざしに挑戦者の魂が宿る。

東京大から加入した日本製鉄かずさマジックの新人、杉浦海大選手

「地道に一つ一つ、差を詰めて」

同じ横浜市出身で、神奈川県立湘南高、東京大を経てプロ入りし、日本ハム、ヤクルトで計5年間、投手としてプレーした宮台康平さん(30)に憧れ、後を追うように自身も同じ道を歩んできた。挑戦者の目は、東京六大学野球リーグでの4年間で鋭さを増した。

「東大の野球部は特異な環境です。プロに行くような選手がそろう対戦相手と比べれば、私たちはやっぱり下手くそです。負けが続くことがわかっているのに、わざわざ部に入ってくる人たちの集まりだから、本当に熱い。学生主体で、戦術だったり、分析だったり、考えるだけ考えて、いろんな手段を講じて相手との差を埋めていきます。スポーツの世界では生まれ持った才能の差というものは確かにあって、その差はとても大きなものですが、それでも、これで負けたら仕方がない、というところまで妥協せずに突き詰めていけば、結果はどうあれ、すがすがしい気持ちになります。地道に一つ一つ階段を上がっていく感じの4年間で、それはつらかったですけれど、一つ一つ成長を実感できたのも事実です」

3年時の秋季リーグで、宮台さんがいた2017年秋季リーグ秋以来7年ぶりのシーズン2勝を挙げ、4年になって主将を務めた昨年の秋も2勝を挙げた。その充実感が言葉ににじむ。

ルーキーイヤーへの意気込みを語る日本製鉄かずさマジックの杉浦海大選手

サブマリンの配球学ぶため俊介さんに電話

大学時代の勝利への探究心が社会人野球への道も開いた。同学年でバッテリーを組んでいたのが、渡辺向輝投手(21)だった。渡辺投手の父は、新日鉄君津(日本製鉄かずさマジックの前身)、ロッテで投手として活躍し、昨年まで6シーズン、かずさマジックの監督を務めた渡辺俊介さん(49)だ。地面すれすれの低い位置からアンダースローで投じる「サブマリン投法」で名をはせ、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも、そのピッチングは威力を発揮した。

向輝投手もまた、父譲りのサブマリン投法で頭角を現していた。この投法を最大限に生かすにはどうリードすればいいのか――。杉浦は俊介さんに電話をかけて、アンダースローの配球について教えを請うた。そのうち、熱心さが伝わり、「一度、うちの練習に来ないか」と誘われた。練習に参加し、刺激を受けた。「僕の能力って社会人野球から見てどう見えますか」と俊介さんに臆せず聞いてみた。「まだまだだけど、通用するところもあると思うよ」と返ってきた。

明治安田の松岡泰希選手(25)の存在も大きい。東京大の3学年先輩で、入学した時の主将だった。ポジションも同じ捕手。食事に誘ってもらったり、社会人野球の観戦に連れて行ってもらったりしながら、チーム作りなどへの助言を受けるうちに、同じ社会人野球の舞台で活躍したいとの思いが強くなっていった。そんな数々の出会いの延長線上に今がある。

=練習に励む杉浦海大選手

都市対抗でのスタメンマスク目標に

「一番の目標は都市対抗野球でスタメンのマスクをかぶることです。捕手はチームメートからの信頼が重要となるポジション。信頼を得てスタメンを取れる選手になりたい」

身長170センチは捕手としては小柄だが、それを補うだけのルーキー離れした気骨がある。

「捕手は経験を積まないと成長しないポジションです。2年後、3年後、4年後にスタメンをとると言っていると、きっといつまでたっても成長しない。いつまでたっても自分に甘く、だらだらしてしまう。だからなるべく早く試合に出られるように練習していく」

仕事との両立を求められるのが、社会人野球だが、シーズンに入ると、ほぼ終日、練習に励むことができる恵まれた環境にあることも入社の決め手となった。

「私のような選手は、少ない練習量でみんなに追いつけるわけがないので、そこも踏まえて今の環境を選びました。大学野球って良くも悪くも自分のためにやっているし、それでいいんだと思います。でも社会人野球は会社のために結果を残す責任が伴う。その責任の伴う生き方を格好良く感じます」

かずさマジックも出場する3月7日開幕の第80JABA東京スポニチ大会(神宮球場など)で社会人野球シーズンが幕を開ける。杉浦にとっても新たな春の到来である。

「ずっと挑戦を続ける人生を送りたいと思っています。その時、自分を一番成長させてくれる環境、道はどれなのか、これからも考えながら生きていきたい」

大きな冒険への一歩。どんなまなざしで大会会場に現れるか、ワクワクさせる。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】

※次回の社会人野球NOWは3月3日公開予定です。