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芽生えた主軸の矜持 日本製鉄鹿島・今里凌選手 社会人野球NOW vol.103

第48回JABA日立市長杯選抜野球大会が4月16日から5日間、茨城県内3球場で開催される。2年ぶりの優勝を目指す日本製鉄鹿島の主軸を担うのが、入社4年目を迎えた今里凌選手(25)だ。都市対抗、日本選手権の2大大会での活躍、さらに愛知県を中心に秋に開かれるアジア競技大会での日本代表入りを目標に、持ち前の打撃にいっそう磨きをかけている。
2月中旬、本拠地の茨城県鹿嶋市のグラウンドを訪ねると、184センチ、90キロの屈強な肉体と柔和な笑みで迎えてくれた。「実戦練習はまだ始まったばかりですが、去年よりもすごくいい感覚で取り組めています」。冬場にフィジカルを鍛え上げてきた成果が隆起した筋肉に表れ、状態のよさが穏やかな笑みからにじみ出ていた。
=4年目のシーズンに向けて練習に打ち込む今里凌選手
「チャンスで集中力発揮」
3年目の昨シーズンは初めて4番を任された。チームは全国でも屈指の強力打線を誇ることから「前にも後ろにもすごいバッターがいるのが鹿島の魅力なので、たまたま4番目に打っているだけ」と力まないようにしたという。とはいえ、もちろん、「4番を任されれば、1試合で1度は必ずチャンスで回ってくる。そこでいかに集中力を発揮して、いいパフォーマンスを出せるか」と常に意識していた。
都市対抗野球1回戦のJR北海道硬式野球クラブ戦で延長十回にサヨナラ犠飛を放つなど勝負強さを発揮した。日本選手権1回戦でも三菱自動車岡崎に惜敗したが、4打数2安打で得点に絡んだ。「例年に比べて得点圏打率もかなり上がりましたが、一方で長打率が下がった側面もあったので、今年は得点圏打率プラス長打力を求めて取り組んでいます」。自らテーマ設定し、さらなる進化を求めて努力を重ねてきた。

=昨年の都市対抗1回戦でサヨナラの犠飛を放つ今里凌選手
育った環境「答えは自分で考える」
自主性は専大松戸高時代に養われた。同校を強豪校に育て上げた持丸修一監督(77)からは「バッティングについて、ほとんど指導されたことがありません。常に『自分の感性を大事にしなさい』と言われていました」という。選手の個性に合わせて向き合い方を工夫するのが、持丸流指導法だといい、今里には「答えを教えない」がコーチ陣も含めての指導方針だった。
時々、課題点をつぶやかれることがあっても、その解決法を見つけ出すのは自らの作業となる。3年間、甲子園にたどり着けなかったが、茨城県土浦市の自宅から、千葉県松戸市の同校まで電車通学しながら重ねた鍛錬が今に通じている。「自分で考える習慣はそこで身についたと思います」と振り返る。
進んだ専大時代に練習試合を組んでもらっていた縁もあり、日本製鉄鹿島に進んだ。入社当時は「一球への執念だったり、泥臭さだったり、ここまでするのか、企業を背負うというのはこういうことか」と驚きの連続だったという。職場でも「応援してもらっている方が多く、だらしない態度は取れない」と背筋が伸びるという。野球以外のフィールドにも学びを増やしていこうと、苦手だった読書も始めた。そして毎年、元日に1年の目標を立てるという。
名将と呼ばれた前任の中島彰一さん(59)を継いで、昨シーズンから指揮を執る藤澤英雄監督(52)からも「選手自身に考えさせる」スタンスが伝わる。「中島さんはドンとしていて『俺についてこい』というイメージがありました。個人的な印象ですが、藤澤さんは、答えを言わない、選手に考えさせようとしている、と感じます」。だから「自分のやるべきことは」と常に思考を巡らせる。

=昨年の都市対抗1回戦でサヨナラ犠飛を放ち、抱き合って喜ぶ今里凌選手
「ジャパン」の志、プロセス重視
2大大会でのホームランを目標に練習に打ち込む。加えて今年は9~10月に愛知・名古屋アジア競技大会も開催される。8大会ぶりの金メダルを目指す社会人日本代表入りが、大きな目標だ。2024年の「WBSC U-23野球ワールドカップ」に代表入りし、優勝を経験しており、昨年の日本代表選考合宿にも招集されている。その道のりで刺激を受け、ジャパンへの憧れを強くしてきた。
「それこそジャパンは自分のやるべきことを自分で考えてしっかりやる集団です。見ていて勉強になる選手ばかりです。その活動を通じて、結果に一喜一憂せず、プロセスを重視するようになりました。そのプロセスが正しかったのか、改善点がないか、そこに着眼点を置くことで、調子の波が少なくなりました。今年はどうしても選ばれたい。選ばれるには、それまでの大会や都市対抗予選で結果を残さなくてはいけない。個人的な1番の目標を代表入りに置くことで、おのずとチームにも貢献できると思います」
大きな目標に向け、起点となるのが、目前に迫った日立市長杯選抜野球大会だ。日立製作所野球場、常陸大宮市民球場、ひたちなか市民球場を舞台に、日本製鉄鹿島を含む16チームが出場する。闘志をたぎらせた今里のプレーがファンを沸かせ、伝統の大会を熱くしそうだ。【毎日新聞社野球委員会・藤野智成】
※次回の社会人野球NOWは4月21日公開予定です。