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高校球児の春、社会人野球OBたちも一役 解説席から活躍後押し 社会人野球NOW vol.104

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「球春」の3月。今年も阪神甲子園球場では「選抜高校野球大会」が行われ、大阪桐蔭が4年ぶり5度目の優勝を飾った。高校生たちの夢の舞台を、NHKによるテレビやラジオ中継を通して支えていたのが社会人野球のOBたちだ。高校球児たちの一つ一つのプレーをハイレベルな視点からの解説で掘り下げ、野球の魅力を全国に発信した。

=センバツで解説を務める川口さん(左)

社会人日本代表監督・川口さんらがテレビ、ラジオで連日「登板」

試合前に行われる各チーム監督への囲み取材の現場。テレビ、ラジオでの解説を控えた社会人野球の元監督らが、記者に交じって質問を投げかけていた。取材が終わればスタンドに上がり、本番に向けて準備を整える。

三菱自動車岡崎で内野手として活躍し、引退後はコーチや監督を務め、現在は社会人日本代表監督を務める川口朋保さんは、センバツは今年が3年目。今大会はテレビ・ラジオの計6試合で熱弁を振るった。何度目であっても、慣れることはない。「毎回緊張しますよ」と明かす。

 長年甲子園で解説席に座ってきた会社の元上司、河原崎哲也さん(元三菱自動車京都監督)の後を継いだ。引き受けた際、河原崎さんからは、「自分の考えをしっかりと伝えるようにすること。社会人で野球をやってきたということは技術の積み上げがあるのだから、それをうまく表現して高校生のプレー、一つ一つのレベルの高さを伝えるように工夫をしたり、そういう視点を持つようにして解説してはどうか」などとアドバイスを受けたという。

「少しでもわかりやすくお伝えできるように努力はしています。ただ、語彙力などを高めないといけないなと、課題も持っています」と川口さん。本番での「対応力」に磨きを掛けることに加え、準備にも時間を掛けて聖地に乗り込んでいる。

毎年、センバツの抽選会で組み合わせが決まり、担当する試合が分かると、各地区の秋季高校野球大会の映像からチームの状況を確認するのが通例だ。「特に投手の投球フォームやボールの軌道、球種などはチェックします。また、キーマンになる選手が各チームそれぞれ何人かいる。キャプテン含めてどういうチーム作りをされているのか、試合を通して私なりに把握するという準備をします」と明かす。

 ひと冬越えた高校生たちの中には、飛躍的に成長する選手も多い。「チームへのアンケートなども参考にしながら秋から冬に取り組んだ課題を洗い出し、伸びている部分に気づけば、そこを伝えられるようにしたいと思っています」という。

「挑戦」に「失敗」はつきもの

一方で、社会人野球に比べ、高校野球ではよりうまくいかない場面も多い。ミスや失策をどう伝えるのか。

「社会人野球でも言えることですが、人間がやっていることですから、ミスはつきもの。挑戦するということは、『失敗』もつきものなのです。試合が動いている中で、いかにそのミスを引きずらず、次のプレーに向けて準備できるか、切り替えられるかが大事。前向きなプレー、次のプレーというふうにやっていることが伝わるような発言を心がけています」。それは、川口さん自身がチームの指揮を執ってきた経験の中で生み出された思いでもある。

画面上で起こったプレーだけではなく、監督の思いの先を伝えることができるのも、これまでの蓄積のたまものだ。大会中には、必ず、担当する試合前の監督への事前取材に立ち会う。わずか5分の取材時間で監督の試合に向けた真意や起用法などのすべてを知ることは不可能。だが、質問の答えから受け取ったメッセージから自分なりに想像を膨らませ、視聴者に伝えられるように心がけている。

例えば「四球を五つ取りたい」という監督のコメント。ここからは「点をいくつ取りたい、ではなく、もうちょっと細かいとこを考えている。要は、際どいボールの見極めを選手に求めている」と、捉えることができるという。「低めのボールを見極めるためには、たまたま低めのボールで見逃し三振するケースも出てくる。それをOKとしておかないと四球を選んでいくことができないが、(OKにできれば)ベルト付近のボールを狙うということにつながる。そこから四球にも結びつく。すごく面白い作戦だなと思いました」と解説する。

=今春のセンバツで優勝した大阪桐蔭の選手らと、活躍を後押ししたアルプスの大応援団

「勝つための努力」、その後の人生につながる

 川口さんが、高校野球の解説を務める上で大事にしていることがある。「甲子園で試合ができるというのはすごくいいことだと思うが、スポーツというのは『勝った、負けた』だけではなく、『勝つためにやってきた努力』にすごく価値がある。当然、試合での勝ち負けの要因は伝えなければいけないが、この場所に立てていることの素晴らしさを伝えたい」と川口さん。「甲子園は高校野球の一部。甲子園に来るという夢が叶わなくて高校野球を終える選手がほとんどです。それまでの努力というのが一番大事で、それがその後の人生につながっていくのではないかと思うのです」。これからも、球児たちの奮闘を支えていく。【毎日新聞社野球委員会・中村有花】

※次回の社会人野球NOWは4月27日公開予定です。