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創部2年目・佐伯市硬式野球団がJABA大会初挑戦 日立市長杯で見えた課題と手応え 社会人野球NOW vol.105

佐伯市硬式野球団(大分)が、第48回JABA日立市長杯選抜野球大会(4月16~21日、日立製作所野球場など)に出場した。野球を通しての地域活性を掲げて発足し2シーズン目。全国の強豪とまみえるJABA大会への挑戦は初めてで、優勝した東芝、エイジェック、東海理化を相手に3連敗で終わった。選手たちにとって悔しさとともに、手応えと課題をつかんだ3日間となったようだ。

=日立市長杯でJABA大会初出場を果たした佐伯市硬式野球団
チームの生みの親は高司健司監督(53)。兵庫県警在職中に、同県警の野球部である県警桃太郎の初代監督を務めた。佐伯市は高司監督が育った郷里。多くの地方都市と同様に、若者の流失や人口減少という課題に直面している。野球の力でそれらに立ち向かおうと一般社団法人「佐伯市ベースボールイノベーション協会」を、地元企業などと協力して3年前に立ち上げた。チームは同協会を運営母体として昨年4月に発足。クラブ登録ではなく企業登録で、都市対抗や日本選手権の出場が目標だ。
選手たちは地元企業12社で作る協同組合に雇用され、建設会社や病院、スーパーマーケットなど各出資企業に派遣されるというユニークな仕組みとなっている。企業にとっては若手人材の確保、選手にとっては大学卒業後も安心して野球に取り組む基盤を持つことができる。練習グラウンドに室内練習場、寮もそろっていて、選手24人のほとんどは大卒1、2年目だ。
チームは昨年の都市対抗予選に出場し、中九州1次予選では熊本ゴールデンラークス、九州2次予選では日産自動車九州(福岡)と、本大会出場経験を持つ2チームに勝利する活躍を見せた。2次予選二回戦でKMGホールディングス(福岡)、第2代表決定トーナメントでもHonda熊本に敗れ、東京ドーム出場は成らなかったが、存在感を示すことのできたデビュー戦だった。
3連敗も先発投手好投
今回の日立大会は九州地区以外の強豪と公式戦で戦う初の機会。高司監督によると、選手たちも楽しみにしていたという。結果から見ると、初戦の東芝戦、2戦目のエイジェック戦と2試合連続の八回コールド負け(いずれも1-8)。「なんとか1勝を」(高司監督)と臨んだ東海理化との第3戦は、一時は2-1とリードを奪ったが、2-6で敗れ、3連敗という厳しい現実を突きつけられた。
しかし、内容を見ると、3試合とも先発投手が好投し、中盤までほぼ互角の展開を見せた。東芝戦で先発した塩見渉投手は速球が持ち味で、東海理化戦の前薗渉投手は左腕の技巧派。この2投手をチームの軸に、エイジェック戦の金田一真投手が3番手として期待される新人だ。金田投手は右打者内角へのストレートの制球が良く、外へのストレートがカット気味に変化する。「粘り強くゴロを打たせようとした」という自身の言葉通り、五回まで3安打に抑えた。3投手が結果を出したのは、今大会の大きな収穫だ。
金田投手は「(大学と違って)社会人は振りが鋭い」という。立ち上がりから全力で行き、五回は相手3、4番を連続三振に仕留めて回を終えた。ところが六回に突如、打ち込まれてしまう。「力不足です。急に足に力が入らなくなった」。強豪相手の緊張感もあったのだろう。体力的に限界が来ていた。
先発陣こそ好投したが、3試合とも救援策は成功しなかった。高司監督は「中盤以降はどうしても層の薄さというか、まだまだのところはあります」と、救援陣の底上げの必要性に言及した。
3試合を通して安打数は14本、うち長打は5番を打った仲村渠朋貴内野手の二塁打1本のみ。守備ではエイジェック戦で内野に三つの失策が出たが、2試合は無失策で終えた。エイジェック戦は立ち上がり、慎重にという意識が強かったのか「内野手全体で足が動いていなかった」と高司監督も感じていた。主将の菊岡愛輝遊撃手は「まだまだあれが自分たちの実力だと思います。練習不足だなと感じます」と反省しきりだった。
菊岡は強豪チームの印象を「1本のヒットでも走者を進めたり、安打数にかかわらず大量得点できたり。一球を無駄にしない強みを感じた」と話す。それは佐伯市硬式野球団の目指す姿でもある。
高司監督は「都市対抗出場経験のあるチームとやらせてもらって、まだ力の差はあるのかなと思う。でもうちの野球もそれなりにできている」と振り返る。投手を中心とした守りで粘り強く戦い、その流れからチャンスをつかみ取る野球が目指す形となりそうだ。まだチームも2年目なら、選手も社会人1、2年目がほとんど。全国制覇を狙う強豪チームの雰囲気、力を選手たちが肌で感じ、今後を考える絶好の機会となった大会となったようだ。

=円陣を組む佐伯市硬式野球団の選手ら
地元活性化にさまざまなイベント
ところで選手24人のうち、九州出身者は8人で、大分県は地元佐伯鶴城高出身の平井駿介捕手と大分高出身の井上洸希投手の2人のみ。これは高司監督が長く兵庫県警に務めていたことから、昨年の1期生は関西の選手が多くなりがちだったというが、現在は九州を中心に選手を勧誘しているという。
佐伯市ベースボールイノベーション協会は大学野球との交流試合、中学年代の大会開催、野球教室の開催などさまざまなイベントを通じて佐伯市の活性化を図っている。その中心となる佐伯市硬式野球団の歩みはまだ始まったばかり。野球を通して地元に貢献できる若い人材を育て、野球をツールとして地元を活性化する新たな試みに注目だ。【毎日新聞社野球委員会・斉藤雅春】
※次回の社会人野球NOWは5月12日公開予定です。