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エイジェック 山中繁新監督が導く化学反応 社会人野球NOW vol.107

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 創部9年目を迎えた社会人野球・エイジェックが転換期を迎えている。2018年の創部以来、21年、24年の都市対抗、23年の日本選手権と全国の舞台を経験し、24年には都市対抗で初勝利も挙げた。着実に基盤を築いてきた一方、若いチームゆえの経験不足や試合運びには課題も残してきた。26年シーズンから指揮を執る山中繁監督(62)の存在が、チームに新たな変化をもたらしている。

 

=日立市長杯で指揮を執るエイジェックの山中繁監督(左)

 山中監督は社会人野球の強豪・トヨタ自動車で監督を務め、実績を積み重ねてきたベテラン指導者だ。現役時代から同社に所属し、1991年の引退後はコーチ、監督としてチームを率いる一方、社業では海外拠点の管理職やレーシングチーム運営にも携わり、国内外で若手技術者や人材育成に関わってきた。

 08年の監督退任後は社業に専念していたが、新たに指導者の復帰の場として選んだのがエイジェックだった。「全国で勝つためには経験豊富な指導者が必要。トヨタ自動車で培った勝利のノウハウを若いチームに伝えてほしい」。チーム側の強い意向もあり、山中監督も「会社の理解もあり、お世話になることに決めました」と就任の経緯を明かす。

トヨタ仕込みの改革着手

 ただ、就任直後に感じたのは成熟した強豪チームとの差だった。「映像を取り寄せて、正直驚きました」。若いチームに抱いた率直な印象は「体力がないし、力強さがない」。最初に着手したのが土台づくりだった。1月は実戦形式の練習をほとんど行わず、「ボールは打たなくていいから、とにかく振れ」と指示し、走り込みに体幹強化、素振りを徹底させた。

 その成果は春先の実戦にも表れた。3月のJABA静岡大会、続く4月のJABA日立市長杯選抜野球大会では、山中監督は「強い球に対して振り負けない力はついてきている」と成長を感じ取っていた。体づくりを優先した成果が、徐々にプレーへ反映され始めていた。

 一方で「かわしてくる投手には、まだ対応できていない」と課題も見えた。変化球への対応力や状況判断など、経験不足ゆえの弱点も浮き彫りになった。かつての成熟したチームと比べれば、若いエイジェックにはまだ伸びしろが残されている。

「主体変容」で意識改革

 山中監督のチーム作りの根本にあるのが、「主体変容」という考え方だ。自らを正しく理解し、意識と行動を変えることで結果を変えていく。「過去と性格は変えられなくても、意識と未来は変えられる」。その言葉を何度となく選手たちへ投げかけ、自分自身を客観視し、主体的に成長していく姿勢を求めている。

 山中監督は「試合に出られない理由を他人のせいにする選手は伸びない」とも言い切る。野球での成長は、そのまま社会人としての成長にもつながる。「野球が終わった後の人生の方が長い。野球を通じて、自分を正しく見られる人間になってほしい」。社会人野球を人材育成の場と捉える視点は一貫している。

=エイジェックの山中繁監督

役割分担で組織力向上

 チーム運営では役割分担も重視する。技術指導はコーチ陣に委ね、自身はメンタル面や意識改革に重点を置く。大きな役割を果たしているのが、26年からチームに加わった山足達也コーチだ。元オリックス、広島でのプロ野球経験の視点も取り入れつつ、組織全体で選手を育てる体制を整えつつある。企業で多様な人材をまとめてきた経験は、野球の現場にも生かされている。

 指導スタイルも時代に合わせて変化した。「かつてのように怒鳴ることもなくなりました。若い子たちには父親やおじいちゃんのような感覚で接しています」。ただし、求める基準は高い。選手自身が考え、行動し、変わることを求め続ける。優しさと厳しさを両立させながら、個々の能力以上に「組織としてどう機能するか」を重視している。

 エイジェックは専用グラウンドや室内練習場、トレーニング施設など環境面にも恵まれている。地域住民が練習を見守る環境もあり、社会人野球チームとしての土台は整いつつある。山中監督も環境への感謝を口にしながら、「結果につなげる責任」を強く意識している。

 「日本一につながる基盤を作る」。山中監督が描く役割は明確だ。短期的な勝利だけでなく、持続的に勝てる組織をどう構築するか。若い力と経験豊富な指揮官の融合が、エイジェックの未来を左右する。【毎日新聞社野球委員会・和田崇】

※次回の社会人野球NOWは5月26日公開予定です。