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クラブ野球選手権大会始球式 岡田幸文さんが東京ドームで伝えた「感謝」と「継承」 社会人野球NOW vol.122
クラブチームから、プロ野球への道を切り開いた「レジェンド」が、思い出のユニホーム姿で東京ドームに帰ってきた。
第50回全日本クラブ野球選手権大会の決勝が9月7日、初めて東京ドームで行われ、全足利クラブOBでプロ野球・ロッテなどで活躍した岡田幸文さん(42)が始球式を務めた。節目の50回大会を記念し、全国9地区から選出された「クラブ野球レジェンド」の一人としてマウンドに上がった岡田さん。クラブ野球最高峰の舞台で初の大役を担った。

=クラブ野球選手権大会決勝を前に始球式を行う岡田幸文さん
始球式にあたり、岡田さんが身にまとったのは全足利クラブ時代の懐かしいユニホームだった。「在籍時のものをタンスから引っ張り出してきました」。プロ野球の世界で数々の大舞台を経験してきた岡田さんだが、実は始球式は初体験といい、何度もプレーした東京ドームのマウンドに上がるのも初めてという。大きく振りかぶって投じた一球はやや高めに外れたが、スタンドから大きな拍手を浴び、「大事な大会の前で初めて始球式をやらせてもらったので、ちょっと緊張しました」と苦笑いを浮かべた。
クラブ野球は野球人生の原点
岡田さんにとって、クラブ野球は野球人生の原点でもある。
栃木県高根沢町出身。作新学院高から日大に進んだものの、ひじのけがなどもあって退学を余儀なくされた。しかし、野球への未練は断つことができず、地元に戻ると2004年に全足利クラブへ入った。足利市内のガス会社で働きながら、仕事を終えた後に練習する生活を送り、入部1年目には全日本クラブ野球選手権の優勝も経験した。
その後、俊足と堅守がプロのスカウトの目に留まり、08年のプロ野球ドラフト会議でロッテから育成6位で指名を受けた。翌年支配下登録されると、10年から1軍に定着。広い守備範囲から背番号にちなんで「エリア66」と呼ばれるなど、11、12年にはゴールデングラブ賞を受賞。11年には外野手としてシーズン連続守備機会無失策359のリーグ新記録も樹立した。

=プロ野球・ロッテ時代の岡田幸文さん(左)
そんな岡田さんだからこそ、クラブチームで野球を続ける選手たちが東京ドームに立つ意味を理解している。「本当に憧れですよ。クラブチームの選手にとって都市対抗に出場しない限り、なかなか立つことができないステージですから」
クラブ野球選手権大会は今年、第50回の記念大会を迎えたことで準決勝と決勝が東京ドームで開催された。「こうやって東京ドームで試合を開催してもらえることは、選手にとって感謝しかない。思い切ってプレーできると思います」。さらなるレベルアップを目指す選手にとっても「プロのスカウトたちもたくさん来ているし、いいステップになるはず」と期待する。
岡田さん自身、クラブチームに所属して働きながら野球を続け、育成選手としてプロの世界に飛び込み、1軍のレギュラーまで駆け上がった。「プロに行けたのは全足利での5年間があったから。学んだのは技術だけではなかった」と振り返る。「野球ができる環境を、周りの企業の方々や後援会の皆さんに支えてもらっている。それこそがクラブ野球の誇りだと思います」
仕事を終えてから練習する毎日は決して楽ではない。それでも野球を続けたい選手たちが、全国のクラブチームでプレーを続けている。「きついかもしれないけれど、野球ができる環境があるのは周囲の皆さんのおかげ。野球をやらせてもらっているという感謝の気持ちを忘れず、取り組んで欲しい」と後輩たちに呼びかけた。
中学校部活動の地域展開に貢献

=足利市内の中学校の部活動を視察する岡田幸文さん(中央)
現役引退後は独立リーグや楽天でコーチを務め、現在は足利市教育委員会学校教育課で中学校部活動の地域展開に携わる。野球だけではなく、文化部を含めた子どもたちの活動環境づくりに関わっている。
少子化などで学校単位での部活動の維持が難しくなる中、地域で子どもたちがスポーツを続けられる環境をどう作るか。岡田さん自身も「自分たちの中学生時代には考えられなかった。時代は変わっている」と実感している。
競技人口減少が著しい野球だが、競技レベルを高めることだけが部活動の目的ではない。「地域でみんなと一緒に野球を楽しめる環境を作る。高校に行っても野球をやりたいという子どもたちを、もっともっと増やしたい」。プロで培った技術を伝えること以上に、まず野球を続けられる場所を残すことを大切にしている。
クラブチームからプロ野球、そして、地域で野球を楽しむ子どもたちへ――。立場は変わっても、その根底にある思いは変わらない。東京ドームのマウンドから岡田さんが投じた一球には、クラブ野球に育ててもらった「感謝」と、次世代に野球をつなぐ思いが込められていた。
【毎日新聞社野球委員会・和田崇】
※次回の社会人野球NOWは10月13日公開予定です。
