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【GRAND SLAM PREMIUM 178】超充実のシーズンも「悔しかった」と振り返る社会人ベストナイン遊撃手・中村 迅

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「迅速、の“迅”です。ですから、モットーはもちろん、何事も迅速に、です」

 長年取材をしてきましたが、“迅”というお名前は初めてです――というこちらのジャブに、NTT東日本の中村 迅はそう答えてくれた。

 充実した一年だった。ベスト4入りした都市対抗では、4試合で打率.400。惜しくも準優勝だった日本選手権は、打率.533と打ちまくって打撃賞を手にする。そして、初めて社会人のみでチームを編成したU-23ワールドカップでは、キャプテンとして3大会ぶり2回目の優勝へ牽引。さらに、社会人ベストナインも獲得した。中村は言う。

 

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NTT東日本で2年目の中村 迅は、日本選手権では打率.533で打撃賞を手にする。【写真=松橋隆樹】

 

「1年目は何も考えず勢いだけでしたが、今年はしっかり結果を出したいとやってきたのが実を結びました。スキルはまだ足りないですが、どんどん成長できていると思います」

 守備の名手だった上川畑大悟(現・北海道日本ハム)が抜け、昨年までのサードからショートに転向。「穴を埋められたとは思わない」が、そのショートでの社会人ベストナイン受賞だから、なおさら嬉しい。

「高校ではショートでしたが、大学ではサード。上川畑さんと比べれば、レベルが落ちるのはわかり切っています。ですから、コーチの井端(弘和=元・巨人)さん、梶岡(千晃)さんがつきっきりで教えてくれました。井端さんは、グラブの出し方など基本的な教えが多く、ほかにも『右足の前で捕れ』や『無駄に突っ込むな』とか、それこそテレビ番組の『球辞苑』で仰るようなことを叩き込まれましたね」

 印象に残る一打は、セガサミーと対戦した都市対抗準々決勝で放った一発だ。1対1と同点に追いついた3回表、なおも一死満塁で打席に入ると、「外野フライかな、と思いましたが伸びてくれて、驚きました」という打球は、公式戦では初の満塁弾となって右翼席に飛び込んだ。

「都市対抗では、同期入社の内山(京祐)がよく打っていて。どんな球でも、いつでもヒットを打てるような感じだったので、自分も負けていられないと思っていたんです」

 常総学院高時代は、どちらかというと守備に自信があったという。バッティングがよくなったのは、「木製バットが向いていたのかも」という大学に入ってから。社会人入りした昨年は、力のあるストレート、変化球のキレに対応するため、投手側にバットのヘッドが入っていたのを、寝かせ気味に変えた。それが、持ち前のミート力を生かすことになる。

 

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中村(中央)はU-23ワールドカップに臨む日本代表でキャプテンを務め、見事に世界一に導く。

【写真=彭善豪】

 

「あまりホームランを打つほうじゃないんですが、1年目の日本選手権では、ENEOSの柏原(史陽)さんからもまぐれでホームランを打ちました。来年はもっと、両方向に長打を打ちたいですね。だからと言って長打を狙うのではなく、自分のスイングをして、それが自然に長打になればいい」

 そのために力を入れているのが、ウエイト・トレーニングによるフィジカル強化だ。大学までは、ほとんど筋トレとは無縁。だから下半身はともかく、上半身が見劣りし、「入浴時に比べてみると、細さはチーム一、二」だという。NTT東日本では、今季からチームとしてトレーニングに力を入れており、その流れで中村も、自らの身体作りを見直すことになった。都市対抗準々決勝でのホームランが「思ったよりも伸びた」のは、もしかするとその成果かも知れない。まだまだ細いが、それでも入社時から4kgほどは体重がアップしたという。

 

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社会人ベストナインは、法政大の同期・佐藤勇基(トヨタ自動車=左)とともに受賞した。

【写真=真崎貴夫】

 

 12月13日の社会人野球表彰式では、揃って社会人ベストナインに輝いた法政大の同期・佐藤勇基と再会。日本選手権でNTT東日本は、決勝でトヨタ自動車と対戦し、その時は佐藤のトヨタ自動車が逆転勝ちで優勝している。

「入社した2021年は二大大会ともベスト4で、今年は都市対抗ベスト4、日本選手権準優勝。自分の社会人ベストナインは嬉しいですけど、悔しいシーズンでした。来年こそ……」

 そう。頂点への道のりばかりは、迅速に辿れるものじゃない。一歩ずつ、行こう。

【文=楊 順行】

 

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