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【GRAND SLAM PREMIUM 180】9年ぶり12回目の都市対抗優勝を成し遂げたENEOS・大久保秀昭監督インタビュー[後編]

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2022年のENEOSは強かった。第93回都市対抗野球大会で9年ぶり12回目の優勝を飾ると、

第47回社会人野球日本選手権大会でもベスト4。都市対抗の決勝では4点のビハインドを引っくり返し、

日本選手権は2試合が延長タイブレーク勝利と、

「簡単には負けない」力は、夏・秋・夏と連覇した2012~13年を思い出させる。

そんなチームを築いた大久保秀昭監督に、

2022年の振り返りと2023年に向けたビジョンを2回に分けて語ってもらった。

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ENEOSを率いて4回目の都市対抗優勝を成し遂げた大久保秀昭監督は、

個人として初となる2回目の小野賞を授与された。【写真=藤岡雅樹】

 

――さて、2023年のシーズンが始まります。最大の目標は、やはり都市対抗連覇ですね。

大久保 当然です。かなり意識しながらやっていきます。戦力的に言うと、まずピッチャーは関根智輝、加藤三範。2年目の2022年は、プロ入りの夢をチラッと見ながらそれが叶いませんでした。悔しい思いをしたでしょうが、チームとしては嬉しい誤算です。この2年の主要大会を、ほとんど投げてきた2人が抜けないわけですから。かつて、大城基志もプロ入りできなかったんですが、そこからの反骨のメンタルが2年連続橋戸賞へのバネになりました。阿部雄大も含め、プロ入りできなかった3人にもそれを期待したいですね。東芝の吉村貢司郞君(現・東京ヤクルト)、鷺宮製作所の小孫竜二君(現・東北楽天)のように3年目でドラフト指名、という例もあります。振り返れば、昨年はその2人のピッチャーが別格でしたね。

――昨年の打線では、「右打者よ、出てこい」と仰っていました。

大久保 対左投手というのは勝ち上がるための大切な要素ですが、最近の左打者は左投手をさほど苦にしません。「右打者を」というのは、むしろ右バッターに発破をかける意味もあり、村上貴哉はそれに応えてくれましたね。ただ、都市対抗本大会では三菱重工Eastから右の武田健吾君を補強し、いい働きをしてくれた。ほかに瀧澤虎太朗と度会隆輝、山﨑 錬は外せません。ディフェンスを安定させるには小豆澤 誠と瀬戸西 純は欠かせませんし、丸山壮史もいいところで一発がありました。結果として村上の出番が少なかったのは、そういう兼ね合いですが、日本選手権では中軸としてよくやってくれました。ただ、その日本選手権では、度会の調子が今ひとつだったり、丸山にここぞの1本が出なかったりと、得点力に関してはまだまだという課題が出ましたね。今年は、そこに新人がどれだけ食い込んでくるかです。

――昨年は、チームとしての数値目標を設定しなかったと聞きました。

大久保 例年は、細かく決めていたんです。チーム打率は2割8分が目標で、出塁率は、OPSは、守備率は、バントの成功率はこれこれ。ピッチャーなら、先発は防御率2点以内、リリーフは0点台……。2022年は、それを一切言いませんでした。もちろん、選手個々に目標は掲げているでしょうが、大会ごと、あるいは通算での記録の集計は食堂に貼り出しますから、それは個々で見ればいい。数字の代わりにチームとして目標にしたのが、「優勝に必要な10項目」です。2年間でチームを把握し、深く分析した上で、これをクリアすれば優勝できる、という条件を設定しました。

――例えば? 明かせる範囲で結構です。

大久保 右打者がほしい。変則投手がほしい。都市対抗では、そこを補強選手が補ってくれました。あるいは、ゴロを打たせる投手がほしい。これは柏原史陽です。無茶苦茶ゴロアウトが多いんですよ。打線は、打倒・吉村。東芝の吉村君を攻略できれば、ほかのピッチャーも打てる、ということです。それと、山﨑、柏木秀文の後釜。彼らを脅かす若手の台頭を期待するのと同時に、2人がさらに成長すればもっといい。そういうふうに10項目を設定して、振り返ると全部クリアしたんです。

 

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加藤三範(右)と関根智輝(左)の若き左右の両輪が、プロ入りを目指して切磋琢磨するのも

都市対抗連覇への大きなプラスになるはずだ。【写真=松橋隆樹】

 

――なるほど。数値目標の場合、それをクリアしたいばかりに、帳尻合わせをしては本末転倒です。それよりも、越えるハードルをわかりやすく明示したわけですね。ほかに昨年は、意図してオープン戦を減らしました。

大久保 年間にして10試合くらいですけどね。ですが、ピッチャーでも野手でも、それまでなら与えられていたチャンスが減るわけで、「非情になる。出番が減ることも覚悟してくれ」と選手には告げました。従来、日程が過密であれば七、八番手のピッチャーを登板させ、挙句に7点も8点も取られることがあったわけです。そうではなく、ある程度は固定したメンバーを中心に戦い、そう簡単にはチャンスを与えないことで、「あのレベルにならないと使ってもらえない」という危機感、競争心を刺激したかったんですね。また、主力中心といえども、試合数が少なければ選手の負担も軽減し、1試合への緊張感、集中力も増す。ですから、大味な試合が減りましたし、私自身の心の中で公式戦を意識した試合、どの試合かは選手には言いませんでしたが、その試合では、ほとんど取りこぼしがなかったですね。

――さぁ、都市対抗連覇への道のりを走り始めます。

大久保 前年優勝チームは、予選の厳しさを経験できないので難しい、とよく言われますが、私は気にしません。予選なしで東京ドームに立てるというのは、スケジュールの面から消耗度から何から、どれだけ楽か。私の中では、推薦出場はメリットしかないです。連覇に向けて新たな10項目を設定するか、数値目標を掲げるのか。そこは、これから考えますが、勝つことだけを見据えるのはいつもの年と変わりません。

【取材・文=楊 順行】

 

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