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【GRAND SLAM PREMIUM 182】プロと社会人の理想的な未来図とは――大川広誉(三菱重工野球部GM)×牧田勝吾(オリックス球団編成部副部長)対談[後編]

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社会人野球とプロ野球は、かつて長く関係を断絶していた時期もあったが、

現在は人材交流なども盛んに行なっている。

そうした時代に、三菱重工広報部企業スポーツ推進センター副センター長で

野球部ゼネラル・マネージャー(GM)を務める大川広誉氏と、日本通運からプロ入りし、

現在はオリックス・バファローズの編成部副部長に就いている牧田勝吾氏に、

両者の立場から見える野球界の現状と未来図について語り合っていただいた。

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――そういう意味では、野球界全体の選手育成についても、プロとアマチュアの垣根を越えて考えていく必要はありますね。例えば、プロ野球には『育成選手』という制度があります。

牧田 育成選手については、各球団によってとらえ方は違います。我々のチームは、既存の二軍選手とアマチュアの選手を比較しながら、将来的なことを考えて育成選手を選びます。支配下登録選手は70名と決まっていますので、その枠との兼ね合いもありますね。ただ、『育成』と言いながらも、我々の強みは育成を含めた全選手にチャンスを与えるところ。春季キャプでは、全選手を対象とした紅白戦をやります。また、『育成』に対する考えが顕著に表れるのがドラフト会議でしょう。育成ドラフトが終わる最後の最後まで、中嶋 聡監督はテーブルについています。要するに、どんな選手でも全員を把握したい。獲得した選手の情報は、しっかりとインプットしておきたい。そういう考えの表れでもあると思います。全員を知ることは大切。それは、社会人野球でも一緒ですよね。

大川 その通りですね。採用の際は、各選手のプレー以外にも人間性やどんな経歴を歩んできたかなども見ながら、それぞれの特長を把握するよう努めます。才能があっても、努力できなければ成長はない。コツコツと取り組む選手は伸びる。才能と成長力は採用の大きなポイントです。そういった側面も見ながら、人材を確保していく必要があると思います。

――近年では、プロ野球経験者が社会人野球でプレーする機会が増えています。選手を受け入れる社会人野球の立場では、こうした時代の流れはどのように感じていますか。

大川 NPB(プロ野球)経験者、我々のチームでは金田和之(三菱重工West)、武田健吾、山下航汰(ともに三菱重工East)らがそうですが、彼らには戦力ということはもちろん、プロ野球という世界での経験、ノウハウなど、我々にはないものをもたらしてくれることを期待しています。また、逆に社会人野球を経験せずにプロ入りした彼らにとっては、我々の世界を中に入って体験するのが初めてです。そんな彼らが、社会人野球も甘い世界ではないことを実感し、全力で臨んでくれていることが我々にとっても誇れることですし、社会人野球界にとってもいいことだと思います。

牧田 現在は、プロからアマチュアに戻れる、あるいは新たに挑戦できる環境が増えています。アマチュアとプロの間で、選手たちが行き来できる環境になったからこそ、我々のようなパイプ役の人間が、もっとよりよい関係性を作っていこうと心がけることが重要でしょうね。

大川 自分たちが身を置く世界に関係なく、まさに共存することが大事なのでしょうね。

――選手たちの『セカンド・キャリア』においては、プロとアマチュアの関係性が非常に重要になってくると思います。

牧田 プロの世界を離れなければならなくなった時、『まだ現役を続けたい』という選手が社会人野球でプレーするチャンスをもらえる。そういう環境が増えることは、野球界全体の活性化にもつながるはず。ただ、そこには社会人野球のGMや監督とプロ側の人間との信頼関係がなければいけないと思っています。

大川 外部の知見を取り入れるという意味では、我々にとってはプロ野球の知見はとても貴重だと思っています。逆に、社会人野球を経験したからこそ、再びNPBに戻れたという事例もあります。プロとアマチュアの垣根を越えて、選手やコーチのセカンド・キャリアのバリエーションを増やすことができているとすれば、野球界に生きる者としては嬉しいことです。また、社会人野球の多様性がさらに膨らんでいくことは、野球界全体にとってもいい流れだと感じています。

牧田 そういう中で、アマチュアの最高峰である社会人野球を全国の人たちにもっと観てもらい、多くの方に応援してもらいたいですね。今以上に、社会人野球が盛り上がる流れが構築されることを願っています。プロとアマチュアの交流戦も増えてきている今、子供たちも一緒に楽しめるような、野球界全体で盛り上がれるような、そんな環境が増えていくことを願っています。

大川 私もそう思います。当社チームが都市対抗や日本選手権に出場する時には、社員とその家族、取引先や地域の皆さんにできるだけ応援に来ていただけるようにしたいと思いますし、対外的にも社会人野球の魅力を発信し、一般のファンの方々にもたくさん観に来てもらえるようにしたいと思います。同じ野球でも、プロ野球、大学野球、高校野球とはまた違った魅力にあふれる社会人野球を、これからもっと盛り上げ、広めていく。そのために、尽力していきたいと思っています。

【取材・文=佐々木 亨/写真=藤岡雅樹】

 

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