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【GRAND SLAM PREMIUM 184】大幅に戦力を入れ替えて全国の舞台に挑むKMGホールディングス

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 2021年に設立70周年を迎えた九州三菱自動車(九州三菱自動車販売株式会社)は、翌2022年からKMGホールディングスへとチーム名を変更し、新たな一歩を踏み出した。九州地区を勝ち抜き、6年ぶりの全国出場を果たすべく、日々の練習と仕事に向き合っている。

 自動車販売店で営業として働く選手の1日は長く、忙しい。例えば、1月なら午前8時前にグラウンドに集合し、11時まで練習する。多くの顧客を抱えているため、練習場には業務用の携帯電話を持ち込み、すぐに対応ができるよう準備している。午後1時に出勤して訪問販売などを行ない、7時頃まで勤務。時には残業も発生するため、寮に戻る時間はまちまちだ。オープン戦が始まる3月は、試合を終えて午後3時から出社予定だという。

「大会期間中は、他の社員に仕事を引き継ぎます。ですから、自分で仕事ができる期間はしっかり勤務し、短い練習時間で野球に集中するしかありません。仕事と野球を両立しながら、プロ入りした谷川昌希さんがいいお手本です」

 加藤大貴マネージャーが、そう教えてくれた。2017年、エースとして都市対抗出場を果たした谷川は、その年のドラフト5位で阪神へ入団した。だからこそ、選手たちは「仕事が忙しいことを言い訳にはできない」と口にする。主将の宮木紳道もそのひとりだ。「慣れるまでは大変でした」と苦笑しつつも、「野球を続けるチャンスをくれた会社ですから」と、覚悟を持って取り組んでいる。

 

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湯上谷 宏コーチの指導を受ける選手たち。「仕事が忙しいことを言い訳にはできない」

 

「僕が新人だった2年前、日本選手権九州最終予選で沖縄電力に4対3で勝利しました。逆転のシビれる試合。若い選手は、そういった感情を味わえているのか、と思うことがあります。勝つビジョン、イメージがついていないのかもしれない。だから、『何となく』練習をこなしていないか。そこには気をつけなければいけません。若さは武器にもなりますが、『最後はやっぱり経験』と言われない戦いをしていきたいです」

 昨年は、都市対抗九州二次予選は敗者復活三回戦で、日本選手権九州最終予選では敗者復活一回戦で敗退した。もう一歩、二歩前進するためには何が必要か。コーチを経て、昨季より指揮を執る加藤伸一監督はこう話す。

「まずはメンタルです。練習でやってきたはずのことを試合で出せない。『やられるのではないか』と不安な気持ちがプレーに表れています。すぐには強くならないし、負けからの脱却は難しい。ただ、同じことをやっていても勝てないので、新たなことを試す勇気も持ってほしいですね。昨年、初めて希望者以外にも退部してもらいました。自ら辞めなければずっと続けられるという甘えをなくしたかったからです」

 

トーナメントでいかに自分の力を発揮するか

 

 8名が退部し、新たに9名の新戦力を迎え入れた。四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンンパイレーツに所属していた仁木敦司は、ほかのルーキーよりひと足早くチームに合流し、打撃練習や声で存在感をアピールしていた。長打力が魅力のスラッガーは、打線にどんな刺激を与えてくれるだろうか。

 指揮官が「新人も含めて横一線」と言う戦力の中でも注目したいのが、3年目の右腕・飯村将太だ。常時140キロ中盤から後半の真っ直ぐを主体に、中継ぎや抑えで登板してきた。今年はエースの自覚を持ってマウンドに登る。

 

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大事な試合を任せてもらえる投手への脱皮を誓う飯村将太(左)と、主将としてチームを牽引する宮木紳道(右)。

 

「練習量が少ないのは事実です。この環境でいかに自ら時間を作って補っていくか、どこに目標を置くのか、個人の意識が重要だと思います。昨年は体調不良で出遅れましたが、今年は順調です。大事な試合を任せてもらえる投手になりたい」

 選手は約3時間の練習を終えると、それぞれの営業所へと出勤する準備を始めた。限られた時間での練習メニューを組み、ノックバットを振るのが湯上谷 宏コーチだ。

「プロとアマチュアでは戦い方が違いますが、どちらも大変です。まさに一球入魂。トーナメントの社会人野球では、いかに自分の力を発揮して結果を出すかが重要です。今年の冬はまず、身体作りから始めました。野手は2ポジションを守れるように取り組んでいます」

 さらに、今季から加藤監督と湯上谷コーチと同様にプロでプレーしていた宮地克彦コーチが加わった。仕事を終えた選手の夜間練習に足を運び、熱心に打撃指導も行なっている。プロ経験者の3名が厳しく、そして熱く選手に寄り添い、どんな変化をもたらすのか楽しみにしたい。加藤監督は最後に、こう決意を口にした。

「彼らは社会人として立派に仕事をしています。ただ、宮崎梅田学園のように、うちよりも練習時間の短い期間があるチームでも全国大会に出場しています。根気強く、全員を勝負師に変えていかなければいけません」

【文・写真=古江美奈子】

 

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