「若い力と中堅、ベテランが融合しての連覇。自分が現役で連覇した2003～04年の、高見（泰範＝当時の監督）さんに並んだのが嬉しいです」

　第77回東京スポニチ大会を昨年に続けて制し、ライバルのENEOSを抜いて大会最多12回目の頂点に立った東芝の平馬 淳監督は感慨深げだ。ちなみに、この大会で連覇の経験があるのはENEOSと東芝だけ。16チームによるリーグ戦と決勝トーナメント方式になった2010年以降では、初めての快挙だ。

連覇に笑顔を見せる東芝の選手たち。若い力と中堅、ベテランが融合した見事な戦いぶりだった。【写真＝藤岡雅樹】

　まさに、「若い力と中堅、ベテランの融合」だった。Hondaとの決勝では山田拓也、齊藤大輝、下山悠介のルーキーが上位に並び、SUBARUとの準決勝、タイブレークの10回表に決勝3ラン本塁打を放ったのが下山だ。光本将吾も準決勝までは四番を務め、投げては北村智紀が王子とのリーグ戦第3戦で1失点完投勝利を収めている。中堅なら、昨年のこの大会で首位打者賞に輝いた田中達朗が攻守に溌剌と動き、長沢吉貴は何度も美技で投手を助けた。そして、ベテラン。準決勝でダメ押しの一発を放った11年目の松本幸一郎は首位打者賞を獲得し、優勝を決める3ラン本塁打の柴原健介主将は10年目だ。この大会の柴原は、先発投手が粂 直輝の時の限定起用だった。

「まさか、柴原が決めてくれるとは。粂との相性もあってですが、何か運を持っていますね」と、ズバリの采配に平馬監督もしてやったり。実力＋運。2010年以来となる都市対抗制覇に、機は熟しつつある。

　決勝こそ敗れたものの、Hondaも力を見せつけた。準決勝までの4試合で34得点と打線が爆発し、失点も僅か3と投打がガッチリ噛み合った。2年目の峯村貴希、ルーキーの小口仁太郎が中軸に座って高いポテンシャルを発揮。東野龍二が変わらない安定感を見せる投手陣でも、岡野佑大、山下拓馬の2年目が成長を示した。2020年の都市対抗制覇に貢献した井上彰吾も、昨年の体調不良から完全復活の気配だ。

　兄弟対決には敗れたものの、Honda熊本の強さもこのところ安定している。大砲･古寺宏輝が死球禍で3試合目から欠場したが、勝ったほうが決勝トーナメントに進出する三菱重工Eastとのリーグ戦第3戦では、ルーキーの井上 剛が延長10回裏にサヨナラ満塁弾。日本製鉄かずさマジックとのリーグ戦第1戦では山本卓弥も満塁弾と、持ち前の打力は健在だ。投手では、高校出3年目の内田了介が台頭。渡辺正健監督は言う。

「都市対抗に向け、戦力を見極めながらJABA大会を戦っていきます」

ベスト4のHonda熊本とSUBARUも躍進が楽しみ

　楽しみなのは、4年も東京ドームから遠ざかっているSUBARUだ。準決勝は延長タイブレークで東芝に屈したものの、阿部博光、手塚 周の二枚看板を起用せずに4強へ進出。山本龍之介はトヨタ自動車を散発4安打で完封し、東芝との準決勝では、八野田龍司が9回まで1失点の粘投を見せた。実は山本、期待されながら昨年まで不本意な成績で、昨年の日本選手権では「クビも覚悟したんです」とベンチ登録さえ外れた。だから、今季はすべてを変えたという。プレートを踏む位置は、三塁側から一塁側に。スピードへのこだわりを捨て、カウントを取れる変化球を磨いた。トヨタ自動車との対戦では、「実戦では初めて使う」というツーシームが有効。見えないところもそうだが、見えるところでも必死に練習したのは「野手の信頼を得るため」で、この試合ではバックが2併殺、山田知輝の美技などで盛り立てた。さらに、大型新人の海老根優大も、東京ガスとのリーグ戦第1戦で2安打デビュー。新人賞を手にした。

SUBARUのルーキー･海老根優大は、4試合にスタメン出場して新人賞に輝く活躍を見せた。

【写真＝松橋隆樹】

「海老根は、まだ変化球に対応できず、ここからが勉強ですが……」

　冨村優希監督は、こう続ける。

「東芝とも五分で戦えた。阿部と手塚を使わずにベスト4というのは、大きな収穫です」

　昨年は、この大会でベスト4だったENEOSが都市対抗を制覇した。果たして、今年は――。

[第77回東京スポニチ大会表彰選手･監督]

最高殊勲選手賞／藤村哲之投手（東芝）

敢闘賞／千野啓二郎内野手（Honda）

首位打者賞／松本幸一郎内野手（東芝）

打撃賞／柴原健介捕手（東芝）

新人賞／北村智紀投手（東芝）

新人賞／下山悠介内野手（東芝）

新人賞／海老根優大外野手（SUBARU）

新人賞／井上 剛内野手（Honda熊本）

監督賞／平馬 淳監督（東芝）

【文＝楊 順行】

グランドスラム60は好評発売中です!!

紙版（左）、電子版（右）とも、どうぞよろしくお願い致します。