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【GRAND SLAM PREMIUM202】きらやか銀行OBが立ち上げたB-net/yamagataで社会人野球をスタートさせたルーキー

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 94回都市対抗野球大会の二次予選が各地区で続いており、67日までに21チームが東京ドームへの切符を手にしている中、秋田県で開催されている東北二次予選に初出場したチームがある。B-net/yamagataというクラブチームで、昨年限りで活動を休止した、きらやか銀行の関係者によって設立された。

 現役引退後に柔道整復師に転じ、接骨院を営みながら野球部のトレーナーも務めてきた齋藤 亘ゼネラル・マネージャー、投手コーチだった石川 剛マネージャーを中心にクラブチーム設立を進め、OBを中心に約20名でスタート。「野球のつながりを大切にしたい」という思いから、baseballnetworkを短縮したB-net/yamagataをチーム名にした。

「しっかり活動していくためにスポンサーを募ろうと、銀行の取引先などにお願いに回ると、多くの方々が『野球を続けるのか。頑張れよ』と快くOKしてくれました」

 石川マネージャーがそう語るように、きらやか銀行時代に業務と野球を両立してきたことも奏功し、年が明けると活動を開始することができた。そんなチームに、異色のルーキーが入団した。

 

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B-net/yamagataの長岡耕大は、五番を任されて都市対抗予選にデビューした。

 

 山形中央高から進学した東北学院大を今春に卒業し、県内の企業へ就職した長岡耕大だ。180cm88kgの恵まれた体格で、五番に座る打席での構えを見ても、サードの守備を見ても即戦力のビッグルーキーという印象だったが……。

「実は僕、大学では硬式野球をやらなかったんです」

 3年間の高校野球を終えた時、甲子園という目標に届いたか否かも含め、球児たちは次のステップでも野球に打ち込むかどうかを大いに悩む。長岡は大学で続ける道を選択せず、20歳になる頃には縁があって山形ポニーの指導者となる。

「けれど、硬式野球に未練を感じてしまったんです」

 子供たちに教えることに責任感や充実感を覚えれば覚えるほど、自分自身の経験の短さを後悔するようになる。もちろん、まだ体も動くのだから、真剣勝負の舞台に立ちたいという思いも消すことはできなかった。

 そんな時、山形ポニーの代表もきらやか銀行野球部OBであったことから、B-net/yamagataを立ち上げる際に声がかかる。断る理由はなかった。社会人の第一線で活躍していた人たちと一緒に練習をしているだけで気持ちは昂り、再び全国大会を目指すことのできる環境にいることが嬉しかった。

「でも、4年のブランクは大きい。素晴らしい方々とプレーするからこそ、迷惑しかかけていないと落ち込みましたが、温かく励ましていただいて……。今は本当に、野球をしていることが一番楽しいですね」

 長岡が「凄い」と感じたのは、齢を重ねても衰えることのないプレーの感性だけではない。よりよく動くための準備、会社や地域を背負って戦う意義、そして、勝敗という結果以上に重んじられるプロセスなど。

「一球の重みを経験できることは、自分のプラスになります。また、あらためてチームスポーツの素晴らしさを肌で感じ、子供たちを指導する際にも役立つと思っています」

 

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ラブ選手権の常連・エフコムベースボールクラブを15対6と圧倒するなど、クラブチームには全勝した。

 

 都市対抗山形県一次予選を首尾よく突破したB-net/yamagataは、二次予選一回戦で100年超の歴史と伝統を誇る水沢駒形野球倶楽部と対戦。先発した石川がフォームでも緩急を駆使した投球で7回途中まで3失点と力投し、打線は12安打で6点を援護。五番・指名打者でスタメン出場した長岡も4回表の逆転タイムリーを含む3安打と活躍し、幸先よく白星を手にする。

 そして、二回戦では地元の大声援を受けるTDKと激突。07とスコアの上ではワンサイドだったが、8安打を浴びせて6回表には無死二、三塁のチャンスを築く。ここで打席が巡ってきた長岡は、2ストライクからファウルで4球粘るも空振り三振に打ち取られ、「あの場面では打ちたかった。全国レベルの投球に対応するには、もっと力をつけなければと痛感しました」と唇を噛む。

 そうして敗者復活戦に回ると、一回戦では能代松陵クラブを2017回コールドで一蹴。「新入社員で有給休暇も少ないので、明日からは仕事です」と長岡がチームを離れ、きらやか銀行OB14名だけで戦ったクラブ選手権の常連・エフコムベースボールクラブとの二回戦も、ここ一番の集中打で156とものにする。三回戦では七十七銀行に敗れたが、まずまずの公式戦デビューだったのではないか。

 練習は水曜日と金曜日の夜、また土曜日にきらやか銀行の施設を借りて行なっているという。

「協賛してくださるスポンサーあっての活動ですが、それでも様々なことに自分たちで取り組んでみると、企業チームだった頃の恵まれた環境にあらためて感謝の思いがあります」

 5試合連続で先発マウンドに登った石川は、そう言って汗を拭った。

 

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新井 諒主将(左から2人目)を中心に、これからどんな戦いぶりを見せてくれるか楽しみだ。

 

 ラストシーズンとなった昨年、きらやか銀行野球部のチームスローガンは『志と覚悟』だった。チームの形や選手の顔ぶれは変わっても、予選の戦いでは、そのスローガンに込めた思いが変わらずに表現されていた。そして、それは長岡をはじめ、きらやか銀行野球部を知らないメンバーにもしっかりと受け継がれていくはずだ。

 次は、チーム目標である第47回全日本クラブ野球選手権大会の出場に向け、息つく間もなく624日に山形県一次予選に臨む。

【文・写真=横尾弘一】

※次号は6月17日にリリースします。

 

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