JABA

JABA

メニュー

トピック TOPICS

【GRAND SLAM PREMIUM226】大阪ガスが2大会ぶり3回目の頂点に!! Honda熊本も2021年の都市対抗に続く準優勝――第48回社会人野球日本選手権大会

bnr_grandslam_cmyk.jpeg (218 KB)

 第48回社会人野球日本選手権大会は、1119日の決勝に大阪ガスとHonda熊本が勝ち上がった。

 地道な選手の育成・強化が実を結び、2021年の都市対抗で19年ぶりに準優勝したHonda熊本は、昨年も岡山大会と北海道大会を制するなど着実にチーム力を高めてきた。ただ、二大大会はいずれも二回戦で敗れているだけに、今大会では一気の逆襲を目論んでいた。一回戦でJFE東日本に64で競り勝つと、二回戦の相手は大会連覇を狙うトヨタ自動車だ。

 試合巧者のトヨタ自動車には1回裏に1点を先制されたが、直後の2回表に石井 元が同点ソロ弾を放つ。その後は先発の横川楓薫が粘っていたものの、5回裏に4安打で2点を勝ち越される。それでも、直後の6回表に先頭の井上 剛がバント安打で出ると、山本卓弥が同点2ラン本塁打を右中間に叩き込む。息詰まる接戦となるも、トヨタ自動車は7回裏に1点を勝ち越し、Honda熊本の攻撃は9回表を迎える。すると、先頭の四番・古寺宏輝が初球をバックスクリーンの右へ運び、三たび同点に追いつく。

 

GSP226-1.JPG

大阪ガス×Honda熊本の決勝。2点を追うHonda熊本は、3回表に稲垣翔太の3ラン本塁打で逆転する。【写真=松橋隆樹】

 

 そうしてタイブレークの延長にもつれ込むと、11回表に3点を奪ったHonda熊本は、その裏のトヨタ自動車の反撃を2点に抑えて勝ち星を手にする。勢いのまま、準々決勝では横川がENEOSの打線を4安打で完封。ENEOSの投手陣に4安打に抑えられていた打線も、6回表一死一、二塁から古寺の二塁打と宮川海斗の中犠飛で2点をもぎ取る。さらに、西濃運輸との準決勝では、エースの片山雄貴が8安打されながら要所を抑えてシャットアウトし、33大会ぶりの決勝進出を決める。

 一方、2019年と2021年にコロナ禍を挟んで大会連覇を達成している大阪ガスは、エースの河野 佳(現・広島)とショートの児玉亮涼(現・埼玉西武)をプロへ輩出した今季は苦しい戦いを強いられる。そして、都市対抗近畿二次予選では投打の歯車が噛み合わず、代表決定戦にも進めずに敗退してしまう。若い選手たちは、その現実を受け止められなかったというが、気持ちを切り替えて夏場は厳しい練習に取り組み、日本選手権近畿最終予選で代表権を勝ち取る。

 東芝との一回戦は2度のリードを追いつかれ、7回表には勝ち越されるも、その裏に逆転して75と辛くも勝利。この試合で力投した稲垣豪人と大宮隆寛の2年目コンビが投手陣の軸となり、日本通運、JFE西日本、日本生命と強豪をいずれも1失点で下し、2大会ぶりに決勝の舞台に辿り着く。

 

決勝は5回までに両チーム2ケタ安打の打撃戦に

 

 決勝は、2回裏に大阪ガスが幸先よく2点を先取するが、3回表に稲垣翔太の3ラン本塁打でHonda熊本があっさりと逆転。Honda熊本が主導権を握ったかと思われたものの、その裏の大阪ガスは二死一、三塁から4連打で5点を奪う。すると、4回表のHonda熊本も二死二、三塁から山本卓の二塁打で2点を返し、5回裏には二死満塁から押し出し四球で大阪ガスが1点を追加。前半までに両チームが2ケタ安打という打撃戦を展開し、85と大阪ガスのリードで折り返す。

 

GSP226-2.jpg

決勝も8回から登板し、胴上げ投手となった大阪ガスの稲垣豪人は、最高殊勲選手賞に選出された。【写真=松橋隆樹】

 

 大阪ガスは、5回に先発の大宮隆寛から左腕の宮本大勢に継投し、Honda熊本の勢いを止めにかかる。しかし、Honda熊本は6回表に二死からの3連打で2点差に迫り、勝負の行方はまだまだわからない。そして、その裏からは連投となる片山を投入。片山は67回をテンポよく3者凡退に斬って取る。

 大阪ガスも8回から稲垣豪人を送り込んだが、Honda熊本は井上の二塁打から一死二、三塁と攻め立て、中島準矢のショートの左へ内野安打でついに78とする。しかも、打順は三番の稲垣翔太と、Honda熊本にとっては願ってもないチャンスだったが、ここで稲垣豪人が踏ん張り、稲垣翔太と古寺を仕留めて1点差を守る。

 最後まで緊張感を保ったままの激闘は、8回裏に大阪ガスが四番・三井健右の中前安打で片山から9点目を奪い、いよいよ9回表に。Honda熊本は二死から北村 優と蓑尾海斗の連打で一、三塁とし、井上もライト線に上手く弾き返したが、これを橋本典之がスライディングキャッチしてゲームセット。97で大阪ガスが2大会ぶり3回目のダイヤモンド旗を手中に収めた。

 試合後、選手の前で涙を見せた大阪ガスの前田孝介監督は「都市対抗予選敗退後に、歯を食いしばって練習してくれた成果を出すことができた。先発を任せた稲垣と大宮には頭が下がる」と、安堵の表情で選手たちを労った。振り返れば、敗退した都市対抗近畿二次予選でも、苦しい試合を戦う選手たちは常にベストを尽くし、横着なプレーは一切見せなかった。対戦相手も必死になる中で、どうしても流れをつかめなかったという印象で、夏場の過ごし方次第でV字回復は期待できると感じたが、まさにそれを実現するチーム力、選手たちの野球に取り組む姿勢は見事と言っていい。今大会から創設された応援団コンクールも最優秀賞に輝き、グラウンドとスタンドが一体となった日本一だ。

 

GSP226-3.JPG

都市対抗予選敗退からV字回復を遂げ、2大会ぶり3回目の優勝を果たした大阪ガス。【写真=松橋隆樹】

 

 一方、一昨年の都市対抗に続いて悔し涙で終わったとはいえ、この3年間、常に日本一に手の届くところまで勝ち上がっているHonda熊本の戦いぶりも素晴らしい。渡辺正健監督は「大阪ガスの集中力にやられてしまった」と唇を噛んだが、大阪ガスを上回る19安打を放った打線、片山と横川を中心に故障者の分もカバーし、5試合を投げ抜いた投手陣ともさらに力をつけるだろう。来季も熱い戦いを見せてくれる――そんな期待を抱くことのできる頂上決戦だった。

【文=横尾弘一】

 

グランドスラム62は好評発売中です!!

GSPPR-62__medium.jpg

紙版(左)、電子版(右)とも、どうぞよろしくお願い致します。