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【GRAND SLAM PREMIUM231】4年ぶりに実施されたアジア・ウインター・ベースボール2023で社会人選手が躍動する

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 若手を中心に、シーズンオフの期間も実戦経験を積むことができるアジア・ウインター・ベースボール(AWB)に、2017年から社会人選手も参戦するようになった。当時、日本代表を率いていた石井章夫監督は「まずはAWBで台湾をはじめ海外の野球を肌で感じ、普段とは違う生活環境にも慣れ、国際大会で力を発揮できる選手を育成したい」と、日本代表選出への登竜門と位置づけた。日本代表候補でチームを編成し、海外で、しかも約1か月に渡るリーグ戦に臨むのは画期的な取り組みで、招集された選手たちが目に見えて成長していくのがわかった。日本からは先にプロも2チームを編成して出場していたため、社会人選手たちにとってはプロを相手にプレーできる貴重な場でもある。そして、2019年にはプロを押し退けて優勝を飾り、社会人の年間行事のひとつとしても定着した。
 だが、2020年春からのコロナ禍で海外の往来は制限され、国際大会とともにAWBも中止に。4年という時を経て、ようやく今年から再開された。社会人日本代表は、10月の第19回アジア競技大会をもって石井監督が勇退し、新たに川口朋保監督が就任。12月には第30BFAアジア野球選手権大会が開催されたため、川口監督やコーチらスタッフはAWBとアジア選手権を行き来するという慌ただしさを強いられる。それでも、アジア選手権では2大会ぶりの優勝を飾り、AWBでもこれまで以上にタフな戦いを見せてくれた。
 今回のAWBには、日本からNPBホワイトとNPBレッドに社会人選抜がエントリー。台湾からは台湾プロ(CPBL)選抜、来春からCPBLに参入する台鋼ホークス、U23チャイニーズ・タイペイ代表が出場し、1125日からリーグ戦17試合、1215日から3日間は順位決定戦が行なわれた。

 

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社会人選抜は、17試合のリーグ戦で9連勝するなど投打にレベルの高い戦いを見せた。【写真=横尾弘一】

 

 社会人選抜には、全期間派遣される14名、前後半の半期派遣10名ずつの計34名が招集される。日本代表候補とあって、選手たちは気合い十分で臨み、11敗で迎えた第3戦から1引き分けを挟んで9連勝。果たして、リーグ戦では1331引き分けと圧倒的な成績を収めた。

 二番に座って出場選手中最多の27安打を放ち、打率.443で首位打者も手にした網谷圭将(ヤマハ)は、横浜DeNAでルーキーだった2016年にもAWBに出場。その時も打率.380と目立つ成績を収めており、「常にベストな状態で試合に臨むためには、何をすべきか考えている」と、プロ経験者らしい安定感で打線を牽引した。また、前半は先発、後半はリリーフで力投した佐藤亜蓮(TDK)は3勝で最多勝利、25奪三振で最多奪三振に輝き、「プロを相手に、どれくらい三振を奪えるかはテーマにしていたので、いい結果が残せてよかった」と笑顔を見せた。

 1216日からの決勝トーナメントでは、準決勝でNPBレッドに12で敗れ、3位決定戦でも台湾プロ選抜に24で惜敗。2019年に続く連覇はならず、4位となってしまった。川口監督は、「私たちがアジア選手権で中抜けし、全体的な選手の疲労度を把握し切れなかったのは申し訳なかった。ただ、前後半でメンバーが代わると、盛り上げ役が代わってチームカラーも変化する。そうしたチームの様子には、勉強になる点がいくつもありました。選手たちは、本当によく戦ってくれた」と、初采配での手応えを語った。

 

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最多安打で首位打者と、安定感抜群のバッティングで打線の牽引役を担った網谷圭将(ヤマハ)。【写真=宮野敦子】

 

 アジア選手権で王座を奪還し、このAWBでも堂々とした戦いを見せられたことで、社会人日本代表の活動もようやくコロナ禍を脱し、平時に戻ったという感がある。2024年は9月に  U23ワールドカップが中国・紹興市で開かれ、またAWBで腕を磨くだろう。3年後に名古屋市で開催される第20回アジア競技大会での金メダルを目指し、強化を続けていく社会人日本代表の歩みに注目したい。

【文=横尾弘一】

 

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